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神戸地方裁判所 平成7年(ワ)955号 判決

原告

金基彩

被告

石田正弘

主文

一  被告は、原告に対し、金一三六万六三六一円及びこれに対する平成七年四月二四日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

二  原告のその余の請求を棄却する。

三  訴訟費用はこれを二分し、その一を原告の負担とし、その余を被告の負担とする。

四  この判決の第一項は仮に執行することができる。

事実及び理由

第一請求

被告は、原告に対し、二七八万二七二三円及びこれに対する平成七年四月二四日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

第二事案の概要

一  争いのない事実

次のとおりの事故(以下「本件事故」という。)が発生した。

1  日時 平成七年四月二四日午後〇時一五分頃

2  場所 神戸市長田区東尻池町九丁目一番三〇号先道路(以下「本件道路」という。)

3  加害車 被告運転の事業用大型自動車(長崎一一け三一〇、以下「被告車」という。)

4  被害車 原告運転の普通乗用自動車(神戸三四す六四七一、以下「原告車」という。)

5  態様 片側二車線の左側車線を走行していた原告車とその右側車線を同方向に走行していた被告車とが接触した。

二  争点

1  被告の責任

2  過失相殺

3  原告に生じた損害額

第三争点に対する判断

一  争点1について

1  証拠(甲二、乙一ないし三、検乙一、二、原告及び被告各本人、弁論の全趣旨)によると、次の事実が認められる。

(一) 被告は、本件事故直前、被告車を運転し、片側二車線の右側車線を時速約五〇キロメートルの速度で西進し、その左側車線の少し後を並走している原告車に気づいていたものの、そのまま進行を続け、本件事故現場にさしかかり、その右側車線の幅員が三メートルのところ、被告車の幅員が二・九九メートルもあるうえ、現場付近がやや湾曲していたこともあつて、被告車の左後部が車線区分ライン上かやや越えたところ、同部が接近して来た原告車の右側面に接触した。

(二) 原告は、本件事故直前、原告車を運転し、片側二車線の左側車線を時速約五〇キロメートルの速度で西進し、その右側車線の少し前を並走している大型自動車である被告車に気づいていたものの、そのまま進行を続け、前方に駐車車両がいたため車線変更をしようとして右に少しハンドルを切つたが、被告車の前に割り込むことは無理と考えて停止しようとして、右ライン上か同ラインに非常に近づいたため、接近して来た被告車と接触した。

2  ところで、原告は、被告車の前に割り込むことは無理と考えて停止した後に被告車から接触されたと主張し、原告本人の供述中には右にそう部分がある。

しかしながら、前記認定のとおり、原告車と被告車は、本件事故直前、時速約五〇キロメートルの速度で並走していたのであるから、原告車が停止する前に、被告車は原告車と接触しないで通りすぎていると考えられるうえ、原告車の右前輪ホイールは約一周にわたつて被告車の塗料の擦過痕が付着しており(乙一、二)、原告車と被告車が接触した当時も原告車が動いていたと推測されることなどに照らすと、右部分を採用することはできず、他に右主張を認めるに足りる証拠はない。

3  右認定によると、被告は、本件事故直前、被告車の幅員とほぼ同じ幅員の車線を走行していたのであるから、やや湾曲していた部分を走行する場合、減速のうえ、車線区分を越えないよう注意すべきであるのに、減速をしないで被告車の左後部を車線区分ライン上かやや越えたところに出したものであるから、過失があるといわざるをえない。

従つて、被告は、民法七〇九条に基づき、本件事故により原告が受けた損害を賠償する責任がある。

二  争点2について

前記認定によると、原告は、本件事故直前、非常に幅員の広い被告車が隣の車線を走行していたことに気づいていたのであるから、特に湾曲している部分を走行する場合、車線区分ライン上かやや越えたところに出て来ることも予測して同ラインよりも控えて運転すべきであるのに、前方に駐車車両がいたため車線変更をしようとして右に少しハンドルを切り、結局、被告車の前に割り込むことは無理と考えて停止しようとしたが、右ライン上か同ラインに非常に近づいたため、被告車と接触したものであるから、原告にも過失があるといわざるをえない。

そこで、原告と被告の過失を対比すると、お互いにある程度やむをえない運転状況であり、双方の同程度の過失により本件事故が発生したと思われることやその他諸般の事情を総合考慮すると、その過失割合は五分五分とみるのが相当である。

三  争点3について

1  修理費用(請求及び認容額・一七七万二七二三円)

当事者間に争いがない。

2  代車費用(請求及び認容額・二三万円)

(一) 証拠(甲二ないし六、原告本人、弁論の全趣旨)を総合すると、次の事実が認められる。

(1) 原告車は、メルセデスベンツE五〇〇リミテツドで、原告が経営する株式会社瑞興の所有であり、初年度登録が平成七年三月であつた。

(2) 本件事故により、原告車の右側面の一面に擦り傷、一部に凹損等が残つた。

その修理として、原告車の板金塗装、フロントサスペンシヨン点検修理、アルミホイール、タイヤ取替が必要であり、その修理期間として、いわゆる外車であることもあつて平成七年四月二六日から同年六月一〇日まで四六日間を要した。

(3) 原告は、原告車の右修理期間中、株式会社瑞興所有の普通乗用自動車ボルボを使用した。

(4) レンタカー料金は、一日当たり、小型車でも五五〇〇円以上であり、高級車では二万円以上である。

(二) ところで、代車使用料は、車両が使用不能の期間に代替車両を使用する必要があり、かつ現実に使用したとき、相当な範囲内で認められると解するのが相当である。

右認定によると、原告は、原告車の修理期間中、原告が使用できないため、原告が経営する会社所有の普通乗用自動車を使用していたのであるから相当の代車使用料が認められるというべきところ、右のレンタカー料金等を斟酌すると、原告主張の一日当たり五〇〇〇円、合計二三万円の代車使用料は相当な損害として是認できる。

3  車両評価損(請求及び認容額・五三万円)

前記認定によれば、原告車は、しかるべき業者のもとで、しかるべき修理がなされているから、その修理は完全になされたと推測できるが、事故歴のある車両は、そのこと自体で交換価値が下落するというわが国の実体を考えると、初年度登録からあまり年数が経過していない場合、相当の車両評価損を認めるのが相当である。

そこで、原告車の車種、年数、損傷の内容、程度、修理費用額等諸般の事情を総合考慮のうえ、原告主張の五三万円をもつて原告車の評価損とみるのが相当である。

4  過失相殺

本件事故につき原告に五割の過失があることは前記のとおりであるから、前記損害合計二五三万二七二三円の五割を減ずると、その後の金額は一二六万六三六一円(円未満切捨て)となる。

5  弁護士費用(請求額・二五万円) 一〇万円

本件事案の内容、審理経過及び認容額等の諸事情に鑑みると、弁護士費用としては一〇万円が相当である。

四  結論

以上の次第で、原告の本訴請求は、被告に対し、損害金一三六万六三六一円及びこれに対する不法行為の日である平成七年四月二四日から支払済みまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があるからこれを認容し、その余は理由がないからこれを棄却することとする。

(裁判官 横田勝年)

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